2008年6月8日日曜日

Kouichi_Sato

ついに公開がスタートした三谷幸喜監督の映画「ザ・マジックアワー」。この映画に主演した佐藤浩市さんは、30年のキャリアの中、とにかく熱く、とにかく男前の役がおおかったのですが、コメディー映画の今作では見事にイメージを覆しました。この「ザ・マジックアワー」では売れない役者、村田大樹という人物を演じており、この村田大樹は映画の撮影と思い込まされ、伝説の殺し屋を演じるという役どころです。オファーは三谷監督の「THE 有頂天ホテル」から2ヶ月たったあたりで、脚本もできていなかった状態でした。この映画には大きな笑いが起こるシーンがいくつかありますが、佐藤さんがポイントにしていたのがナイフを舐めるシーンです。殺し屋を演じる村田大樹がやくざを挑発して、ペーパーナイフをべろんと舐めるこのシーンを「観るものをストーリーのジェットコースターに乗せる場面」ととらえて考えに考えたそうです。脚本には「ペーパーナイフを猟奇的な顔でなめる村田大樹」と書いてあるだけでしたが、彼の解釈は「猟奇的なほどにおかしい顔」でした。初めて鏡を見て芝居をしたというほどこだわりがあるシーンで、映画の予告でも使われていました。勢いで笑わせる喜劇もあれば、作りこんだ笑いもあるという三谷監督の喜劇の特性をじっくり考えて撮影に挑んだ結果この作品の代表的なシーンに仕上がったといえます。コメディー映画への挑戦は、佐藤浩市さんのイメージを崩すことになります。これまでは、熱く、泥臭く、正論を掲げて戦う男の役が多く、世間ではまさにそう認知されていました。しかし、彼自身は固定されたイメージは嫌いなようで、今回の村田大樹の役でトライさせてもらえる喜びを監督に教えてもらったとコメントしていました。2007年の「スキヤキ・ウェスタン・ジャンゴ」では、強烈な武将、平清盛を演じたのは印象的でした。さらに宮藤官九朗さんがメガホンをとる「少年メリケンサック」にも出演するなど、イメージが覆るような作品が続いているのも確かです。こういった役が楽しめるか、振り回されるかはこれからの問題だそうです。

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